透析医療機関の経営革新、バランスト・スコアカードの影響力について。
透析マネジメント / What's New / 第49回日本透析医学会学術集会:シンポジウム「経済環境と透析医療」
医療経営戦略研究所所長 櫻堂 渉
今後10年間我々が直面する脅威は、政府の医療改革の推進による医業利益の低下、患者数の減少、コストの増大、競争の出現といった経済的側面が挙げられる。
更に、国民全体の医療リスクに対する感受性がより強まり、これを背景として患者の透析医療への安全性に対する希求、インターネット環境整備による医療情報の流動化、情報開示など、多岐にわることになる。
即ち我々はこれまでの過去10年間とは比較にならないほどの変化の大きさと速さを経験することになる。しかし、これらは脅威ととらえるべきではない。むしろ機会と捉え、変化に対して積極的に対応する組織だけが、勝者になるはずである。
何故なら変化そのものは、どのような手段を講じてもコントロールできないからである。
このような環境の変化に対して透析医療機関は、刻々変わる外部環境の変化に対して、どのように自らを変革するかという課題に直面するのである。
即ち、言い方を変えれば、これからの透析医療機関における最大の課題は組織対応の形成能力に集約される。
多くの医療機関の組織システムは、業務オペレーションを中心としたものであり、環境変化への対応機能が欠如している。
これに対応するためには、これまで形成してきた、あらゆるシステムを見直し、業務プロセスを改善し、組織のカルチャーを変え、職員の仕事への取り組み姿勢を変え、サービス水準を上げ、経営姿勢を変え、組織構造を変革しなければならない。
即ち、今後求められる組織体制とは、サービス成果を最優先とした経営システムへの大胆な転換である。この様なマネジメントを発揮するための方法論は多岐にわたるものの、その手段だけを模倣しても無益に終わる。
我々は今回透析医療機関に有効なマネジメントシステムとして、新たな経営プロセスのモデルを示し、その中でBSC(バランスト・スコアカード)を取り上げる。
BSCは、近年米国産業界で導入され、その成果が確認されている。日本において医療界では2001年頃からそのコンセプトが導入された。
しかし、単にBSCを取り入れただけでは、組織的な改善が望めない点に言及するとともに、バランスト・スコアカードを活用した経営プロセスの理論と実践、更に成果と問題点に関して報告する。