透析医療機関経営者に役立つコラム

今次診療報酬改定を嘆くより、今後を予測する。

透析マネジメント / 櫻堂渉のコラム / No.4 今次診療報酬改定を嘆くより、今後を予測する!

櫻堂渉のコラム

櫻堂渉のコラム

【2006年10月 No.4】

■今次診療報酬改定を嘆くより、今後を予測する!

今次改定で突然導入されたエポの包括化により、ほとんどの透析施設経営者は、将来に不安を覚えていることだろう。透析診療報酬の削減が、ここ数回の改定で続いてきた切り下げ方式から包括化へと転換したことは、一体何を意味するだろうか。

透析患者50人のクリニックでは年間1000万円以上の減収

今次改定では、慢性維持透析医学管理料の引き下げ、夜間・休日加算の切り下げ、そしてエポの包括化が断行されたが、まずは、こうしたトピックが実際の経営にどれほどの影響を与えているのかについて明らかにすべく、透析患者1人1ヵ月当たりの売上げを改定前後で比較してみた。

その結果、平均的な維持透析患者の透析回数である月13回、1回約4時間の診療モデルで比較した場合、金額ベースで約1万8千円のダウン、約4.7%の減収となった。透析患者50人を診療している透析クリニックの場合、月間では90万円の売上ダウン、年間では何と1080万円ものダウンとなる。

今次改定を嘆くより2008年度以降の予測を

診療報酬の改定は患者単価に直接影響するため、今次改定により透析患者の診療単価は、先のシミュレーション結果を見るまでもなく大きく減少したはずだ。しかし、嘆くだけでは事態は改善しない。医療費は市場で調整されるのではなく、政策で決定される。診療報酬についても、単に「診療技術料の価格表」として捉えるだけでなく、「政府からのメッセージ」として、国が透析医療をどのように考えているのかに想いを馳せながら、検証する必要がある。

診療報酬のマイナス改定が一過性の出来事ではなく、今後も続いていくかについて、現在の診療報酬を論評するのでは意味がない。今後の予測を立て、来る2008年度の改定に向けて経営上のリスクを推し量ることが肝要だ。

まずは、これまでの改定の変遷を鳥瞰し、08年度以降の改定を予測してみよう。患者1人1ヵ月あたり売上げを時系列で見ると、毎年減額している。

では08年度以降に、この傾向がV字回復することはあるだろうか? 残念ながら、国家財政の悪化、社会保障費抑制の流れに鑑みれば、今後、透析の診療報酬がアップすることは考えられない、減収は続く、と予測するのが自然だろう。

透析患者数は増加傾向でも一施設あたり新規患者数は減少

今次改定は、確かに無視できないほどクリニックの経営に大きな打撃を与えている。
しかし、問題はそれだけではない。医療機関の経営に、もっとも大きな影響を与えるのは患者数だ。言い換えれば、需要と供給のバランスである。今後の競争環境を予測してみよう。
本来、診療報酬は供給側をコントロールする弁のような役割を担ってきた。だが、透析施設数については、効果的に機能してきたとは言い難い。透析市場そのものが多数乱戦を引き起こす構造を有しているからである(櫻堂渉:透析医療と経営−業界構造分析−,日本透析医会雑誌,16(3),2001年)
透析医療の特徴としては、第一に、他の診療科を専門とする医師でも、透析クリニックの院長に就任することが容易な点が挙げられる。大人数を一度に診療する透析医療の特徴から、もともと透析クリニックでは、院長が透析専門医であっても、大学病院などから非常勤医を雇用するケースが多く見られた。これは、透析クリニックを開業する可能性のある医師数が多いということだ。施設数増加の一因はここにある。

第二の特徴としては、透析施設の投資規模の大きさが挙がられる。開業時の投資資金は、少なく見積もっても1億5000万円。スタッフ数も通常の内科診療所と比べて格段に多い。
投資額の大きさゆえに、経営が傾きかけたとしても、安易に撤退できないわけだ。
こうした構造により、透析市場では施設が乱立。透析患者数と施設数の需給バランスに大きな影響を及ぼしている。

確かにESRD(慢性腎不全)の患者数は、毎年増加している。このため経営者は、将来の需要増が保証されていると考えてしまいがちだ。ところが実際には、ESRDの全体数は増加しているものの、1施設あたりの新規患者数は3年連続で減少。全国の透析施設の平均新規患者数は、いまや1施設あたり年間2人と、過去最低水準にまで落ち込んでいる。つまり、透析患者数の増加よりも、施設数の増加のほうが上回っているというわけだ。
このような環境下で、透析医療施設は、経営の継続性を維持するために、どのようにしたらよいのだろうか? この続きは、次回。

(CLINIC BANBOO 2006年9月号掲載記事より)

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