2006年度の診療報酬改訂。どのような印象を持っていますか?そして、あなたが出した結論は?
透析マネジメント / 櫻堂渉のコラム / No.2 八方塞がり

【2006年5月 No.2】
2006年度の診療報酬改訂。どのような印象を持っていますか?「これは大変だ!何とかしなければならない!どうすれば、これまでの利益を確保できるのだろう!いや、それどころか絶望的だ。これからますます診療報酬は下がって行くだろう!ダイアライザーや薬もこれまでずいぶんと値引き交渉を続けてきたから、この期に及んでおいそれと値引きに応じてはくれないだろう。この状態から抜け出すためにはどうすれば良いだろうか?」こんな気持ちになっていませんか?そして、このような気持ちからあなたが出した結論は?
「そうだ、値引きが不可能だとしたらダイアライザーの種類を変えよう!」「エポが包括化になったから、この際エポの使用量を減らせば儲かる!」「いやいや、患者数だ!患者数を増やせばよい」このように反応をしていませんか?
このように人をすぐに行動に駆り立てることを、刺激に対する反応と呼びます。パブロフの犬はご存知ですよね。そう、条件反射の実例で出てくるあれです。犬に餌をやるときに、ベルを鳴らしてから餌を与えます。それを繰り返すと、ベルの音を聞いただけで犬はヨダレを流すようになるというものです。これは条件付けにより体が反応しているわけです。透析の医療機関の院長の行動もこれに近くないですか?診療報酬の改訂の度にやることといえば、薬の値引き交渉、材料の値引き交渉、材料の共同購入。こんなことを何時まで繰り返すのでしょうか??いや、私は値引き交渉が悪いといっているのではないのです。もちろん、物は安く買うに越したことはありません。しかし、どうでしょうか?他にやることはないのでしょうか?
私が言いたいのは、「本当にこんなワンパターンの対応でいいのでしょうか?」ということなのです。常にワンパターンの反応しか出来ないとしたら、それは先程示したパブロフの犬と同じだということになりませんか?診療報酬の改訂という刺激に対して、単純に反応を繰り返しているだけだからです。
人間は考える葦である−この言葉を学生時代に聞いた人は多いはずです。フランスの哲学者パスカルの言葉です。
その意味は、人間はひとつの葦にすぎず、自然の中で最も弱いもの。だがそれは考える葦であり、考えることこそが人間の証だということです。つまり、パスカルの教えは、考えることが如何に重要かということを言っているのです。そんなこと判っていますよね。そう、私でもパスカルに言われなくても判っている。それでは、先程の刺激に対する反応というのはどういうことなのでしょうか?考えていると言えますか?そう考えないで反応しているだけです。生活習慣のようなもので、朝起きて何も考えずに着替えて、何も考えずに歯を磨く。意外にこういうことが多くありませんか?
実はひとつのパターンやシステムが根付くと、人は何も考えないようになるのです。同様に何も考えずに、診療報酬の改訂の度に薬品や材料の値引き要請という行動に出る。これも、実は脳を経由しているとはいい難いのです。何の問題もなくこれが成立してきたのは、これまで診療報酬が高めについていたために、毎回値引きを行うだけで簡単に乗り切れる環境にあったということです。非常に優しい経営環境で、誰もがたいして経営努力なしに安全が保証されてきた世界。それがこれまでの世界観なのです。
この世界観のことをパラダイムと言います。もう少し簡単に言えば、あなたの物の見方や考え方のことをパラダイムといいます。物の見方というのは、実は人によってかなり違います。あなた自身で試してほしいのですが、何事も注意深く、意識して物を見ると物が変わって見えるはずです。
よく、こんな経験がありませんか?いつも通っている道なのに、今日は違って見える。よく見ると、いつも通っているのに気がつかなかったけれど、新緑が綺麗で、花が咲いている、あたりには花のいい香りが漂っている。
この例の様に、ある刺激に対する反応は、あなたのこれまでのものの見方に依存しています。あなたが外の世界を見るフレーム(窓)によりあなたは物事を認識します。そして認識した物に対して反応が起きます。つまり、あなたの認識により行動が決定付けられるわけです。だからあなたは、似たような刺激に対しては同じような行動をとることになります。これは、自動的に起きるのです。だから、行動を変えるためには、あなたの認識をかえなければならないということになります。つまり、パラダイムを変えることが結果を変化させるきっかけになるということなのです。
物の見方を変えるというのは、意識しなければ出来るものではありません。そして、それは意外なところからやってきます。透析の業界にいると、皆似たような反応をするので、パラダイムを変えるきっかけにはなりません。他の業界を眺めることが、あなたにとっての参考材料になりますから、業界の常識が非常識に見えてくるはずです。さあ、そうなればしめたものです。私は医療コンサルタントとしての信条があります。経営を改善するには、難しいことはいらない。「当たり前のことを、当たり前にやることにより、経営は改善して行く」というものです。ですから、当たり前とは何かという常識を他の業界から学んでいただきたいのです。あなたの思考は深化し進化するのです。今回はここまで。